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村上豊八商店「日光彫」、陶庫「益子焼」、蘭と月「お香・線香」

栃木県には58品目にもおよぶ県指定の伝統工芸品があり、県内各地で熟練の職人たちが活躍しています。


伝統工芸と聞くと敷居が高いと感じる方もいるかもしれません。しかし、もともとは日常生活を助けるために生まれたもの。最近では現代のライフスタイルに合わせて工夫された品も増えています。日々の暮らしに取り入れやすい工芸品を、日光彫、益子焼、お香を手掛ける職人に、手仕事に込めた想いとともにお聞きしました。

自宅でも、オフィスでも。木のぬくもりを身近に感じる日光彫の小物

日光彫は江戸時代初期、東照宮社殿の造替で全国から集められた彫物大工たちが、仕事の余暇を利用して彫り始めたことが起源とされています。その特徴は筆で描かれたような豊かな抑揚と美しい曲線。「ヒッカキ刀」と呼ばれる独特の彫刻刀を自在に操る職人たちによって、一つひとつ手づくりされています。

村上豊八商店(むらかみとよはちしょうてん)の手塚真亜子さんは東京の美大を卒業後、三代目である父を手伝ううちに職人の道へ。日光彫では一般的に、木地の成形・彫り・塗りの工程を事業者間で分業しますが、村上豊八商店では全工程を一貫して手掛けています。手塚さんは彫りと塗りを担当。近年は職人が減っていることもあり、一人二役をこなすようになったそうです。

手塚:家業を継ぐつもりはなかったのですが、図案の作成など美大で学んだことが役立って、手伝っているうちにいまに至りました。ただ、絵を描くのとは違い、木の種類や木目によって下絵どおりには彫れないこともあるので、一つひとつの材料に合わせた調整が必要なんです。

手塚真亜子さん

こうした細やかな調整は機械で代替することが難しく、まさに職人芸というべき手仕事で行われています。そのため、彫りが複雑になるほど高額になってしまいますが、「日光彫を気軽に買えて、身近で使えるように」と制作された商品が、1個550円のリップミラーです。

リップミラー

日光彫が施された小さな板の裏に鏡がつけられており、彫りのデザインや塗りの色の種類も豊富に用意。ポケットにも入るため、荷物を少なくしたい登山者などからも人気になっています。

より木のぬくもりを感じたい方には、桂材でつくられた小物入れもおすすめ。アクセサリーや事務用品をしまっておくなど、自宅でもオフィスでも使えるため、日常に取り入れやすい商品です。

小物入れ

底も塗装されており、中央に桜の花びらが彫られている

手塚さんがイチから考案したメモスタンドは、贈りものとしても人気の商品。薄い鉄板が仕込まれており、マグネットでメモを留められます。また、机などに立てるだけでなく壁に掛けて使うこともできます。

手塚:どういう商品ならプレゼントしたときに喜んでもらえるかを考えてつくりました。メッセージも一緒に添えて渡せば、より気持ちが伝わるかなと思います。木目が消えないように塗装を薄くして、さりげなく彫りを入れたので、インテリアとしても使っていただけたらうれしいですね。

メモスタンド

木製品は見た目のぬくもりだけでなく、実際に手に触れたときの温度も金属やプラスチックとは異なります。「身のまわりに無機質なものが増えてきた」という方は、まずは気軽に使える日光彫を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

村上豊八商店

住所

日光市松原町256

定休日

不定休

営業時間

10:00〜16:00

電話

0288−53−3811

事業者ページ

https://www.tochigimono.com/blog/producers/tm0118/

色や模様一つひとつにも熟練の技が詰め込まれた益子焼

益子焼は栃木県だけでなく、国の伝統工芸品にも指定されています。その起源は江戸時代末期とされていますが、大正時代に後の人間国宝・濱田庄司が益子町に定住したことで大きく発展。民藝運動の広がりとともに全国に知られるようになりました。

現在の益子町は、250もの窯元が集まる焼き物の一大産地。毎年春秋に行われ、多種多様な焼き物が並ぶ陶器市も大変人気です。

益子焼の販売店として、1974年から営業している陶庫の店内

益子焼をつくる工房の様子

伝統的な益子焼は、柿釉(かきゆう)など独自の釉薬(ゆうやく)を使った素朴で力強い質感が特徴。2021年時点で13人しかいない益子焼の国の伝統工芸士の一人で、県の伝統工芸士でもある大塚雅淑さんは、「じゃじゃ馬のような益子の土や釉薬に魅せられた」と言います。

大塚:益子の釉薬は安定しづらいので、使う人が少なくなっているんです。でも、そこをどうコントロールするかが楽しい。飽きっぽい自分の性には合っているのかなと思いますね。

大塚雅淑さん

同じく益子焼の国及び県の伝統工芸士で、国内最大級の公募展『国展』では当時最年少で国画賞を受賞している萩原芳典さんも、益子焼に魅了された一人。自身の工房には種類の異なる9基の窯を持ち、物心つく前から窯に火をくべていたという窯の達人です。

萩原芳典さん

萩原益子の釉薬は、薪を使って火を焚く「登り窯」と相性がいいんです。赤松を燃やした灰がつくとクリアになって、冴えた色になり、窯の温度が低くてもずっしりとした重厚感が出る。いまは薪を使わない電気窯やガス窯で焼くことが多いですが、登り窯をイメージしていろいろな焼き方を試しています。

萩原さんが制作した小皿

二人とも口を揃えて言うのは、「益子の土や釉薬を追求するだけで、時間がいくらあっても足りない」という奥深さ。色や模様一つひとつにも、長年の経験によって培われた技術が詰め込まれています。

 

ただ、使う人が必ずしもそこに気づく必要はないと言います。

大塚:もともと益子焼は日常雑器。生活のなかで普通に使ってほしいですね。もし使うなかで割れても、また買えばいいと思いますし、割れるほうがものを大事にする気持ちも生まれるのかなと思います。

大塚さんが制作した器

益子焼の販売店として1974年から営業している陶庫では、大塚さんや萩原さんのほか、さまざまな益子焼作家の作品を販売。店長の塚本ゆ美子さんは、「益子は自由な気風の産地」だと言います。

塚本:一時は自由な気風が広まりすぎて、お客さんからも「どれが益子焼ですか?」と言われるようになったんです。でも、いまは(前述の)二人のように一丁目一番地で伝統を守っている人や、新しい発想で焼き物をつくる若い世代が、いいバランスで共存できるようになりました。だから益子を手づくり村みたいに捉えて楽しんでもらえたらいいですね。

塚本ゆ美子さん

陶庫

住所

益子町城内坂2

定休日

年末年始

営業時間

10:00〜18:00(11月〜2月は17:00まで)

電話

0285-72-2081

事業者ページ

https://www.tochigimono.com/blog/producers/tm0117/

日々の暮らしにやさしい香りを。この道50年の名匠がつくる、線香と置くお香

日光周辺には広大な杉林があり、栃木県では江戸時代から杉の葉を使った線香がつくられてきました。そのため「杉線香」や、その技法に天然香木や生薬を調合した匂い線香「栃木の線香」が、県の伝統工芸品にも指定されており、現在でも全国有数の線香の産地です。

足利市と栃木市に店舗を構える「蘭と月」は、もともと足利でお香と線香のセレクトショップとして営業していましたが、仕入取引先だった県内の老舗線香会社が火災によって廃業したことから自社で製造を開始。その老舗で工場長を務めていた樋口喜巳さんが薫香士を務め、伝統の技術を引き継ぎながら、オリジナルの新商品も開発しています。

樋口さんは19歳から線香づくりに携わり、この道50年。「栃木の線香」で県の伝統工芸士に唯一認定されている名匠です。樋口さんが前職時代につくった線香を愛用していた人が、新聞やインターネットの記事をヒントに所在を探し当て、「蘭と月」まで買いに来ることもあるそう。

樋口喜巳さん

材料の状態、温度や湿度など、さまざまな要因で仕上がりに差が出るため、同じ香りにするにはレシピだけではなく、研ぎ澄まされた感性と技術が必要です。ましてや他人のつくった香りを再現することは、プロでも容易ではありません。それだけお香や線香の香りは唯一無二のものといえます。

樋口:材料は天然のものなので、仕入れるたびに香りの強さなどにバラつきがあります。捏ねている段階で少し違うなと感じたら、足りないものを追加したり、他のものを足して調整したりと、自分の感覚を信じるしかないんです。

「蘭と月」が自社製造を始めた当初から、性別や世代を問わず人気の商品が「置くお香」です。火を使わなくても香るため、子どもやペットがいる家庭でも安心して使えるのが特徴。香りが薄くなってきても、温めたり、表面をヤスリなどで削ったりすれば香りが戻るため、長く楽しむことができます。

4種類がセットになった「月ここち 四君子」は、春夏秋冬の植物を代表する「蘭、竹、菊、梅」をイメージした香りで構成。いずれもベースには、香木として古くから親しまれている白檀のなかでも最高級とされる老山白檀の根木が使われており、濃密な甘さとやさしい残り香が漂います。

樋口:こだわりは、なるべくいい素材を使うこと。それと、栃木市は地下水に恵まれているので、材料を捏ねるときは、汲み上げた地下水をかまどで沸騰させて使っています。

四季を代表する香りの組合せ「月ここち」のセット

月形の置くお香のギフト「月ここち」

「置くお香」は、仕事部屋やリビング、玄関、トイレなどさまざまな場所で利用されています。「蘭と月」代表の大竹麻実恵さんのおすすめは、車内とデスクの引き出し。

大竹:お香は空気があたたまると香りが広がるので、車との相性がいいんです。冬でも陽が当たるとほんのり香りが充満して、ドアを開けるのが楽しみになりますよ。引き出しも、密閉されている間に香りが広がるので、開けた瞬間にふわっと香り、仕事中でもほっと一息つけると思います。

大竹麻実恵さん

蘭と月 栃木店・工場

住所

栃木市万町3-22

定休日

月、火、水曜日

営業時間

10:00〜17:00

電話

0282-21-7787

事業者ページ

https://www.tochigimono.com/blog/producers/tm0048/

職人さんに話を聞くほど、ひたすら真摯に自らの仕事に向き合ってきたこと、作品の細部にまで思いが込められていることがあらためてわかりました。生活のなかにひとつでも手仕事品を取り入れて、日々に彩りを与えてみてはいかがでしょうか。

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